平和団体のMD(ミサイル・ディフェンス)反対とは?

2006.7.8 アメリカは横須賀に新鋭イージス駆逐艦DDG89マスティンを配備した。
本艦は、MD(ミサイル・ディフェンス)の機能を有することから、平和団体などが抗議行動に出た。

「ミサイル・ディフェンスは先制攻撃の敷居を低くするだけだ。」というのが論拠のようだが・・・。

相互確証破壊の法則という論理をご存知だろうか。
米ソ冷戦時代、双方大量の戦略核ミサイルを保有し、相手が攻撃したら、残る戦力の反撃によって、両国とも耐えがたい損害を被ることを前提として、結果的に平和を保つというものである。
アメリカのMD(ミサイル・ディフェンス)に関して、ロシアが反対しているのは、このバランスを崩すことになるためだ。
すなわち、アメリカのMD(ミサイル・ディフェンス)体制が整ってしまえば、ロシアの核戦力は脅威でなくなるから、戦力の均衡が崩れてしまうと。
そして、その論理から、「やっちまうなら整備される前だ」という話もでている。
いずれにしても、超大国の核戦力の現状を前提としているものだ。
しかし、MD(ミサイル・ディフェンス)の体勢が確立されれば、アメリカが核兵器の保持を極限出来る要素でもありる。

米ソ(現ロシア)等超大国は、その経済体制と戦力の強大さから、失うものも大きければ、過去の事例から学んでいることも多い。
しかし、貧しい国は失うものもないから、どんな手段も怖くもない。
そこで大量破壊兵器の使用の敷居が低いとされる。
さればこの暴発にどう対抗するか。
ここでMD(ミサイル・ディフェンス)は極めて有効とされる。

例えば、連合赤軍のハイジャック事件の折、日本政府はテロに屈し犯人の要求を呑んだ。
「人の命は地球よりも重い」とは名台詞だが、核攻撃の脅威は、乗客200名程度の比ではない。10万人単位であろう。
もし、当時、核の脅しがあったなら、なし崩しであったことは想像に難くない。
その意味では、北朝鮮などからの核攻撃に十分な対抗策を持つことは必須の条件だ。

現状でも、北朝鮮の拉致問題は一行に解決しない。
話してもわからないものの横暴をこれ以上許すわけには行かないだろう。

「ミサイル・ディフェンスは先制攻撃の敷居を低くするだけだ。」は、ある意味その通りかもしれない。
しかし、それ以上に、使用をためらう敷居は、もともとかなり低いといえるだろう。
この脅威を甘んじて受けるのか。
或いは、自らの平和をどのように守るのか。

話してわかる相手なら、拉致問題を解決してみていただきたい。
ピョンヤン宣言の内容を曲げてはばからない国家に対して、国際常識は通用しない。

戦力とは、確かに特定の相手という制限はつかない。
照準をどこに向けるかというのは、そのときの敵対状況であって、昨日の敵は今日の味方、昨日の味方は今日の敵でもある。

MD(ミサイル・ディフェンス)自体は、本来、攻撃的性質を持っていない。
初動体制で発射基地や製造施設を叩くという場合を除けば、純然たる防衛に徹することが出来る。
その意味では、MD(ミサイル・ディフェンス)は、極めて有益な防衛体制であり、これを否定する意味がわからない。
むしろ、MD(ミサイル・ディフェンス)の否定は、超大国の核保有を公認し、相互確証破壊の法則に元ずく平和を認め、すなわち、核兵器の存在を「必須」としているとさえいえる。
更には、核拡散を招き、核戦争の敷居をドンドン低くしているといえる。
インドの核武装はまさにこのためであり、インド政府は各国が核廃絶に応ずるなら時刻も核放棄をすると当初から表明している。




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新規作成日:2006年7月9日/最終更新日:2006年7月9日